ユニオン・ルネッサンス

2009年11月26日(木曜日)

労働組合の社会参画と独自の活動―セイコーエプソン労働組合

前回ご紹介した「未来フォーラム」に参加されているセイコーエプソン労働組合では、組合員のキャリアサポートをはじめ、「マイ箸」運動、ユニオンファンドなど、数多くの斬新な活動に取り組まれています。今回は、セイコーエプソン労働組合執行委員長の袖山和彦さんに、組合員から求められる組合像と、社会と労働組合との接点についてお話をうかがいました。

(聞き手:仕事と暮らしの研究所 代表 鹿野和彦)

ニーズに合わせ、組合員の豊かな生活を後押しする

鹿野:未来フォーラムでは、参加されている労働組合の長所をたくさん学べるというお話がありましたので、それぞれの組合で取り組まれている独自の活動をご紹介いただきたいと思います。今回は、セイコーエプソン労働組合さんの活動です。

袖山:私たちセイコーエプソン労働組合では、組合員から期待される組合像を見つめ直し、昔のように鉢巻を巻いて闘争をして賃上げを勝ち取るよりも、組合員一人ひとりの自立支援をし、豊かな人生をフォローしていくことこそ、この時代にあった組合だという考えに至りました。

鹿野:そうですね。働き方や価値観が多様化している中、労働組合の活動領域を広げていかなければ、組合員のニーズに応えきれませんね。具体的にはどのようなことに取り組まれているのでしょうか?

袖山:進めている具体策として「経営対策」「ライフサポート」「社会貢献」の三つの柱で活動しています。
 労働組合の基本ともいえる「経営対策」の柱では、組合員の生活を守るため労使交渉をベースに活動し、「ライフサポート」の柱では、個人のキャリア形成や子育て、生活応援のための数多くのセミナーを開催しています。具体的には、医療保険・生命保険セミナー、家計の見直しセミナー、確定拠出年金セミナー、財産作り、資産形成、運用にいたるまで、幅広く講座を展開し、すぐに定員になってしまうほど人気のものもあります。
 しかし、老後を睨んだ資金作りについては、「投資」に関する知識が乏しいサラリーマンには浸透しにくいという現実がありました。そこで、労働者が安心して「投資」に参加できるよう、労組が出資してユニオン投信を設立しました。ファンド オブ ファンズで運用するファンドで、手数料を低く押さえ、子供も含めて定期定額購入が可能です。少ない資金でも長期的に運用して資産作りができます。労組が関わることで、組合員のみならず投資経験の少ない一般の人にも気軽に始めてもらえればと願って設立しました。この会社は、将来利益が出た際には配当を全て社会貢献に活用する志をもっており、組合が行う新たな社会参画の形になればとも考えています。

鹿野:確かに労働組合で会社を興すというのは斬新な取り組みですね。また、社会性のある取り組みとして注目されうるのではないでしょうか。

袖山:「労働組合の社会参画」はこれからの労働組合が主体的に考えていく問題です。ファンドの設立は、社会にお金を回すという意味を持ちますし、資本家として、投資家として、今までと違った切り口で組合から社会に向けたアプローチができます。理解されるまで時間がかかるかもしれませんが、口コミなどで粘り強く世間に広めていきたいと努力しています。
 また、「社会貢献」という柱では、「ハッピースマイル活動」と称して活動を展開しています。組織で眠っていたお金を取り崩して、2002?2004年にカンボジアに3つの学校を作るという取り組みですが、新たに教員不足という問題も浮き彫りになり、最近はカンボジアの教員の養成も支援しています。
労使共同で取り組んでいる「Kids ISO」という取り組みにも参加しています。次の時代を担う子どもの環境意識を高める支援を目的とした活動で、ワークブックの提供と、その添削をする赤ペン先生をボランティアで行うというものです。

マイ箸運動で個人が社会とつながっていく

袖山:これまでいろんな活動をしてきましたが、どうしても“組織”で動いていることが気になっていました。そこで、組合員自らが社会に触れられる活動として「マイ箸運動」を始めています。
「マイ箸」という言葉はよく聞かれるかもしれませんが、私たちの取り組みは、森林を守るという単なる環境活動ではありません。私たちがこの運動で売る箸には、地元長野の木曽ひのきの間伐材を使用されています。箸袋は、ニートや引きこもりと呼ばれる若者の就業支援を目的に、自宅で縫製作業をしてもらうものと、カンボジアのスラム街に現金収入源の確保を目的に足踏みミシンを送って縫製をしてもらうものの二通りがあります。袋詰め作業は、下諏訪にある知的障がい者施設にお願いしています。

マイ箸

このようにして作られたマイ箸は、単なるエコではなく、箸・箸袋・袋詰全てが社会貢献に繋がっているのです。組合には一銭も利益はありませんが、組合員自らが社会に触れ合う活動として、大いに意味があるものだと思っています。


鹿野:資源の問題だけではなく、社会への貢献を多方向から考えているところが素晴らしいと思います。世間でもマイ箸が定着してきているようですし、是非活動を広めていってほしいですね。これからも、組合と社会のあり方についての画期的な取り組みを期待しています。

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