ユニオン・ルネッサンス

2010年1月13日(水曜日)

労使間の壁を取り払う―アスモ労働組合―

未来フォーラム」に参加している組合の活動紹介も、いよいよ最終回。今回は、2009年9月に行われた「未来フォーラム」オリジナル企画「青春キャンプ」でその手腕を発揮したアスモ労働組合の副執行委員長である水野雅通さんに、労使関係を良好にし組織を活性化させる組合の取り組みについて、お話をうかがいました。

(聞き手:仕事と暮らしの研究所 代表 鹿野和彦)

他では得られない感動と成長感、達成感を味わうために

鹿野:2009年9月に開催された「未来フォーラム」オリジナル企画「青春キャンプ」はアスモ労働組合の実行力や情熱を遺憾なく発揮されたといわれています。企画の概要と、コミュニケーション活動強化への思いをお聞かせ下さい。

「青春キャンプ」参加者の皆さん\\
3つの組合から集まった
「青春キャンプ」参加者の皆さん

水野:「青春キャンプ」企画は、私たちが昔労組イベントとして行っていた「キャンプ」が、今の若い世代の子に通用するのかという素朴な疑問からチャレンジに至り、セイコーエプソン労働組合、資生堂労働組合、アスモ労働組合の各組織からスタッフを募り、企画から実行までを仕切ってもらいました。
集まったスタッフには、「自分の労働組合のまとめ役」という縦軸と、「他の組合の人達と一緒になって運営する」という横軸を意識しつつ、「みんなのために」という視点から、自主的に計画を進めてもらいました。
彼らに感じてもらいたいことは、「人の心を動かす」ことの難しさと素晴らしさでした。信頼が創られていない中での携帯やメールでの連絡は、やらされ感や不信感が募るばかりで、相手は動いてくれないもの。「自分が直接会って話そう」と踏み込めるか、自分の心を伝えようと動けるかが勝負です。事前の準備段階こそがスタッフの人創りの場だったといえると思います。


鹿野:それまでに会ったことのない人との交流ができ、目に見えて成長した人もいるかと思います。「青春キャンプ」で学んだ計画性や実行力を、ビジネスをはじめ組合以外の場所でも活かしてもらうことが大事ですね。若い組合員でも、きっかけさえあれば大きなことができるということを感じてもらいたいですし、イベントで知り合った人も交流を続けてもらえたらと思います。

水野:「青春キャンプ」の目的は、皆でひとつのものを創る楽しさを味わうことと、「会社が違う」というハードルを越えて、かけがえのない仲間を作ること。そして、皆に喜んでもらえるために、何をすればよいのかを自分たちで悩み、考え、心で感じてもらうことです。
結果として反省すべき点は多々ありますが、当日の参加者の楽しそうな笑顔や活き活きとした姿、参加してよかったという言葉は、スタッフにとって何よりのご褒美だったようです。私たちとしては、やり遂げたときの成長感、達成感を味わえてもらえたのが一番です。仲間の心を自分の心で動かすことが、労働組合活動の原点ですからね。

職場の労使で本音が話し合える風土づくり

鹿野:アスモ労働組合が持っている結束力や仲間意識は、どういった場で構築されているのですか?

職場の未来を考える労使の話し合い\\
職場の未来を考える労使の話し合い

水野:まだ、一部の職場のことで、人に話せるような状況にはありませんが、アスモ労働組合では職場で何か問題を感じたら、そこの管理職と職場役員、組合員が合宿を通じて、職場について本音で語り合う風土が徐々にできつつあります。単なる愚痴の言い合いではなく、職場の現状について向き合い、思いをぶつける。そして何をすべきかをお互い考えるのです。
組合員の問題のほとんどは、上司と部下が直接話し合えば解決することばかりなのですが、そこに向き合わず、お互いの胸の内を勝手に解釈して、不満や不信につながってしまうことが多くあったため、2005年から職場労使の話し合いの場を設け、3歩進んでは2歩下がっての連続の中、少しずつ意識を高めてきました。
昨年の6月には、職場役員が300人ほど集まり、職場をどうしたいかを話し合う研修会の中で、初日の夜には会社の取締役や部長が入り、一緒になって職場やアスモについて語り合う場面を創りだすことができました。


鹿野:世の中の経済状況が厳しい中、働いている人が「やらされ感」を感じながら仕事をしているかどうかが、会社の将来を決めるといって良いほど重要になっています。また、問題があっても、労使で話し合えないところは多いですよね。風通しを良くするこういった取り組みができると、組織として、会社としてすごく強くなると思います。

水野:こうして話し合える雰囲気づくりができたのには、2002年に始まった当労組の「アスモ夏祭り」というイベントが大きく影響しています。職場のつながりを強くすることが目的であることから、家族や地域の人は参加できません。実行に際して委員会を40ほど作り、組合、会社、正規、非正規などの垣根を壊して、いろんな人が委員会のリーダーやスタッフを担当していきます。その数は当日までに600人程まで膨みます。組合の役員が担当するのは、縁日と職場における踊りの練習のみ。会社役員から新入社員、アルバイトも含め皆で創り上げるプロセスを大切にしています。
08年に行われた夏祭りでは職場ごとのCMを流したり、職制チームや新入社員のダンス、会社役員単位の職場対抗歌合戦もやりました。中でも見所のひとつが、伝統になりつつある「アスモソーラン」です。職場委員がリーダーとなって職場での練習を喚起し、当日の最後にみんなで踊ります。これについてはイベントそのものよりも、職場委員が職場の職制や組合員に「練習しましょう」と声を掛けること自体に大きな意味があると思っています。中々できるものではありませんから。
もともとは組合で始めたイベントなのですが、今では会社側も一年に一度の大イベントとして大切にしてくれています。「アスモをこういう会社にしていこう」ということを言葉や文章ではなく心で感じあい、価値観が共有できていることは大きな成果であり、今後ますます厳しい状況が続く中、これこそがアスモの力の源泉に成り得るものだと信じ、労働組合として手を緩めずしかけ続けていきたいと思います。

参加者が一体となる伝統のアスモソーラン

参加者が一体となる伝統のアスモソーラン

鹿野:そうですね。労使間の壁を感じさせない風土づくりと持ち前の情熱で、組合も会社もますます発展することと思います。ありがとうございました。

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