ユニオン・ルネッサンス

2010年5月11日(火曜日)

組合員の幸せと、会社の成長を支援する組織でありたい―マルハンユニオン―

アミューズメント系総合企業マルハンの労働組合として、全国各地に散らばる組合員の声を吸い上げ、経営陣に届けるマルハンユニオン。同ユニオンでは2006年の組合設立にあたって、会社が経営理念・行動指針として定める「マルハンイズム」の実現を組合の目標のひとつに掲げ、活動の幅を広げています。今回はマルハンユニオン中央執行委員長の松岡栄之さんに、組合員の幸せや生活の豊かさの実現と、会社の発展に寄与する組合のあり方についてお話をうかがいました。

(聞き手:仕事と暮らしの研究所 代表 鹿野和彦)

マルハンユニオン 中央執行委員長 松岡 栄之さん\\\\\\\\\\\\\

マルハンユニオン

中央執行委員長 松岡 栄之さん

一人ひとりの組合員に向き合うことが組合活動の出発点

 ―まずは、ユニオン設立の経緯を教えてください。

2006年設立当時、マルハンは全国に230店舗、1万人以上の従業員を抱える規模の大きい会社でしたので、なかなか個人の顔が見えず、従業員の声が経営陣まで届かないという問題がありました。そこで、先代の委員長を中心とした初代役員15人が立ち上がり、「現場の声を集約し、職場や会社の課題・問題を会社と協議することこそが従業員の幸せ、会社の発展につながる」という考えのもと、マルハンユニオンを設立しました。

当時の組合役員は労働組合についてまったくの素人という状態から、上部団体であるUIゼンセン同盟傘下の諸先輩方に教わりながら、現在4期目に突入したところです。

 ―ゼロから組合活動をスタートするためには、会社側からの了解や、組合員となる従業員からの理解を得なくてはならず、さまざまな苦労があったのではないでしょうか?

マルハンイズム

マルハンイズム

マルハンの経営理念、行動指針などを示した「マルハンイズム」。

もちろん、組合設立に対する反対意見もありました。マルハンは、アミューズメント業界の中でも比較的高いE.S.(従業員満足度)とC.S.(顧客満足度)を得ており、会社としても、働く一人ひとりを活かすためのさまざまな施策を実行しています。そんな中で、わざわざ組合費を徴収し、別組織をつくる必要があるのかという意見もいただきました。

そこで、まずしっかり伝えたのは、組合設立の目的は、組合員を幸せにし、会社をより良くするためだということ。会社では、従業員を豊かにし、会社のさらなる成長をめざすための経営理念・行動指針として「マルハンイズム」というものを掲げています。マルハンイズムの実現は、組合にとっても会社にとっても、働く一人ひとりが幸せになることで会社を良くし、ひいては社会全体を良くする上で不可欠なものです。組合とは、会社と協働して、このマルハンイズムを実現するためにあるのだということを明確にし、結成以来これを基本姿勢として大切にしています。

 ―具体的にはどのような活動をしてこられたのでしょうか?

まず1年目は、組織化に集中して取り組みました。職場でマネジャー職についている組合員に「職場リーダー」になってもらい、役員から各リーダーに組合活動についての説明を行いました。まずは組合というものを理解してもらい、現場の声を吸い上げることが重要だと考えたためです。

具体的には、機関紙や映像を使いながら、組合員の声を必ず会社側に届けるということを組合員と約束し、活動を進めました。そうした中、1年目の春闘でベースアップと労働条件の改善を要求し、一定の成果を上げられたのはマルハンユニオンを理解していただく大きなきっかけになりました。もちろん会社側の理解もありましたが、目に見える形で組合活動のインパクトを残すことができました。ただし、春闘は組合活動のほんの一部にすぎません。それよりも初年度に重視したのは、一人ひとりの組合員に心から向き合い、現場の声を吸い上げ、職場の現状を会社と共有することでした。

―会社にとっても、現場の声は大切ですし、それを集約してくれる労働組合は貴重な存在です。ただ労働組合には労働組合としての役割もある。そのあたりはどのように整理されていますか?

そうですね。ただ、現場から吸い上げた要求をそのまま会社側に伝えるだけでは意味がありませんし、マルハンイズムの実現にもつながりません。そこで、2年目からは組合活動におけるキーワードを設定し、それをもとに活動を推進しました。それが「一体感」です。マルハンイズムでは、「依存ではなく自立」という行動指針を掲げています。その達成のためには、個人が勝手な要求を述べるだけではなく、職場単位で、組合員がそれぞれ何をできるかを考えてほしいということを職場リーダーに伝え、職場がひとつのチームとして機能することをめざしました。会社が必要とするのは、自ら考えて行動できる人材です。マルハンイズムに沿って行動することが、組合員の幸せにもつながるという、マルハンユニオンの原点に立ち返ったのが2年目の活動でした。この延長線上に、現在の活動が成り立っています。

お互いの夢を支援する、自立した組織をめざして

―会社と組合が、それぞれ異なる方法ではありながら、協力して同じゴールに向けて行動するということは、非常に理想的な活動の形であるように思えます。組合としての課題はありますか。

職場によって活動に対する温度差があるのはひとつの課題ですね。たとえば、職場リーダーであるマネジャー職には店舗異動があります。ある店舗で組合活動が定着していても、その職場リーダーが異動すると、またゼロからの活動になってしまうことがあり、3?4年目はその繰り返しでした。しかし、次第にリーダーの数も増え「自分たちでやってみよう」という動きが出てきています。今では、全国各地で、職場や地域の一体感を醸成するための様々な活動が始まっており、組合本部は、それを全面的にサポートしています。それぞれの活動を横展開し、共有するために、機関紙やホームページなどで活動紹介をしています。それを見た他の職場でさらに活動が広まり、活性化されているようです。

また、1?2年目に比べると、組合活動の目的についての理解も深まり、組合員からの声の質も高くなってきたと感じます。ただ要求を言うだけではなく、まず自分たちでできることを考えるようになるなど、少しずつ変化が見て取れるようになってきました。しかし、まだまだ職場によって温度差があるのも事実。年々、自主的な活動ができる職場とそうでない職場の格差が広がっており、それをいかに底上げし、更に組織を活発にするかが大きな課題です。

―現在、理念を重視して経営する企業が増えていますが、組合活動も同じ。あらためて何のために活動するのかということを見据えた上での取り組みが求められています。マルハンユニオンでは、そうした目的やビジョンが明確だからこそ、自主的な動きも出てくるのではないでしょうか。今後、どのように活動を広げていくのかをお聞かせください。

今後の取り組みとしてはまず、自立した組織をつくることを考えています。組合員や役員一人ひとりが自ら考えて行動し、チャレンジできる人材の育成に貢献できればと思っています。
そして、マルハンという会社がそうなのですが、組合としても夢を大切にする組織でありたいですね。一人ひとりの夢や目標が、業務や組合活動の経験を通して実現するような環境づくりをしていきたいです。従業員の夢を大切にするということは、会社の目標でもあります。しかし、なかなか自分の夢を語り合う場がないのが現状。そこで、組合で1泊2日の合宿を行い、各リーダーが夢を語り合う場を設けるという取り組みを始めています。

―会社だけだと、日々の業務に追われてしまいがちですから、そういった機会を設けることは、組合の役割として非常に大切ですね。賃金や条件といったハード面だけではなく、仕事に対する誇りや夢といった、ソフト面を充実させることも今後組合に求められる活動だと思います。

同じ仕事でも、誰かにやらされて働くのと、目標をもって働くのではモチベーションが全く異なります。マルハンユニオンのメンバーには、夢や目標をしっかり持って、チャレンジできる人になってほしい。また組織としても、自分の夢だけではなく、人の夢も応援しあって、共に実現をめざすことができるような組織にしたいと思っています。

マルハンイズムの中に、「1+1=3」という考えがあります。1人でできないことでも、仲間が集まれば実現可能になり、さらにプラスアルファの何かが生まれる組織を、組合としても実現したいと思っています。

―自分だけではなく、人のためにも存在する組織の姿は、会社であれ組合であれ共通の理想像だといえますね。これからの活動に期待しています。ありがとうございました。

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