ユニオン・ルネッサンス

2010年7月13日(火曜日)

活動を通じて考える組合の存在意義 ―マルイグループユニオン―

小売サービス企業の大手、マルイグループの従業員で構成される唯一の労働組合であるマルイグループユニオン。現在、組織の存在意義をまとめた「MGUバリュー」の理念実現のために精力的に活動しています。今回はマルイグループユニオン中央執行委員長の七戸裕一さんに、現在特に注力されている、パートで働く社員の組織化について、その意義と活動にかける想いをうかがいました。

(聞き手:仕事と暮らしの研究所 代表 鹿野和彦)

マルイグループユニオン 中央執行委員長 七戸 裕一さん\\\\\\\\\\\\\

マルイグループユニオン

中央執行委員長 七戸 裕一さん

パート社員の組織化を通じ、組合活動を活性化させる

 ―現在、非正規社員の組織化がクローズアップされています。貴ユニオンでもパート社員の組織化に取り組んでいるそうですが、その活動を始めるまでの経緯を教えてください。

以前はマルイグループの中には会社ごとに3つの組合があり、また組合のない会社もありました。こうした中で2000年以降、会社が分社化し、グループ経営を推進しはじめ、グループ内での人材交流が活発になりました。それに対応して、従業員同士の一体感や労働条件格差の是正、会社に対する協議・交渉力の強化等を目的に、グループ内に一つの労働組合という考えのもと、マルイグループユニオン(以下、MGU)を結成することにしたのです。そして、活動の方向性を議論する過程で、2008年に活動理念「MGUバリュー」を構築。「ミッション」・「私たちが大切にしたい共通の想い」・「あるべき姿」の3つの柱でユニオンとしてのバリュー=存在意義をまとめ、活動をスタートしました。現在、「MGUバリュー」を実現するために、基本戦略として「職場対応力の強化」「労使協議体制の強化」「サポート制度の拡充」の3つを指針に掲げ、さまざまな活動を推進しています。

社員T(パート社員)の組合参画を進めている背景には「MGUバリュー」の存在を欠かすことはできません。「MGUバリュー」を実現するためには、同じグループで働く全ての労働者の参画が前提であるからです。例えば、基本戦略にある「職場対応力の強化」で言えば、同じ職場で働くパートの方も加わっていただいたほうが、より一体感のある活動ができます。職場の一体感が高まれば、企業の業績にも間違いなくプラスに寄与しますし、ひいては私たちの労働条件の向上にもつながるわけです。また、「労使協議体制の強化」も、比較的職場の近所に住んでいる消費者に最も近い存在であるパートの皆さんが組合員になれば、会社へ協議・提言する内容もより一層中身の濃いものになります。実際にこれまでの話し合いでも、社員Tの皆さんから業務改善につながる有益な意見が出されています。

 ―非正規社員を組織化することで、当事者たちのメリットに加え、既存の組合員や会社にとってもプラスになると考えて取り組んでいるわけですね。もっとも、初めての組織化ということで、社員Tの皆さんの中には組合員になることに戸惑いや疑問をもたれた方も多いと思います。どのようにアプローチされているのですか?

昼休みの時間にお弁当を用意して行う「ランチオフサイトミーティング」を柱にアプローチしています。食事をしながらリラックスした雰囲気の中で、「組合の意義」や「主な福利厚生のサービス」について、一方的な説明にならないように極力質疑応答形式で行っています。ちなみに執行部からは、本部の専従が必ず1人行くようにはしていますが、基本的に同じ職場で働く非専従の支部役員が中心となって進めています。

「ランチオフサイトミーティング」をして改めて気づいたことがあります。それは、社員Tの皆さんが些細な不満や課題をなかなか口に出すことができずにいること。そして発言することが私たちの想像以上に勇気がいることだということです。たとえば、10年以上働いている社員Tの方に「何か職場の不満はないですか」と聞いてみると、「ロッカー室に傘立てがないことがおかしいと、前からずっと思っている」とおっしゃいました。さらに「それを誰かに伝えたのですか」と聞くと「誰に言えばいいのか分からないし、言ったことにより、クビになるかもしれませんから言えません」と。

「組合費が高い」とか「加入のメリットがあまり感じられない」といった反対の声も一部いただいておりますが、組合の活動は間違いなく社員Tの皆さんの役に立つと信じて組織化に取り組んでいます。そして、皆さんに納得して加入してもらうことという前提のもと、年内を目安に社員Tの組織化を進めていきたいと思っています。

 ―社員Tの皆さんとのふれ合いは、役員の方にとっても、組合本来の価値観を改めて知る良い機会になりそうですね。

そうですね。私たちは入社したときから組合がありますし、そのことを当たり前のように考えています。しかし、当たり前だと思っていない社員Tの皆さんに組合の必要性を理解してもらうためには、役員自身が労働組合の存在意義や必要性、またMGUの特徴について真剣に考え、しっかりと理解しないと説明できません。こうした意味では、役員にとっての労働組合、MGUとは何かを勉強する機会にもなり、また、相手の立場に立つことでコミュニケーション力の向上にもつながっていると思います。さらには、これは全く想定外だったのですが、非専従の支部役員と専従の本部役員が一緒に「組織化」という一つの取り組みをすることで、今まで以上に支部と本部の距離感が縮まったように感じています。

労働組合の全ての活動は、会社のためそして組合員のため

―今後の組織拡大にともない、より一層会社と組合との関係づくりが重要になってくると思います。組合としての課題はありますか?

企業を取り巻く環境は厳しく、特にリーマンショック以降極めて厳しい状況が続いています。こうした状況下で、昨年度より組合の活動方針の重点項目に“業績回復”を掲げて取り組みを進めています。中でも特に注力しているのが、職場のオフサイトミーティング。具体的には、就業後に組合員が休憩室に集まり、支部役員の進行のもと、少人数に分かれて「気楽にまじめに本音の話し合い」を行います。アルコールも少し飲みながら、会社や仕事、職場のことを議論しています。その際特に意識しているのは、「業績回復に向けて自分たちができることを議論しよう」ということ。「会社に○○してほしい」ではなく「自分たちで○○していこう」を中心に話し合うようにしています。最初のうちは、会社や仕事に対する愚痴が多かったのですが、徐々に自分たちで取り組める改善提案が多く出されるようになってきました。現在では一部の支部において、お店の店長も参加して一緒に議論したり、またMGU全体では会社の経営陣と組合役員との「労使オフサイトミーティング」を開催するなど、広がりをみせています。厳しい時代は今しばらく続くと考えられる中で、労使の垣根を越えて真剣に話し合うこと、そしてお互いの信頼関係を深めていくことは、結果として良い会社につながると信じて取り組んでいます。

―このような活動を進める上で、職場の役員の方には現場でのコミュニケーション力が求められるように思います。そうしたスキルを上げる人材育成については何か取り組まれているのですか?

職場の役員は異動で変わるため、任期が比較的短いのが特徴。そうした中で、「役員としてのやりがい+役員をしたことによるメリット」が伝わるような取り組みを意識しています。たとえば、「管理職向けの経営分析セミナー」「チームワーク向上セミナー」などの仕事にも役立つ組合役員限定の講座の開催や、先ほど挙げた労使オフサイトミーティングへの参加などがあります。労使オフサイトミーティングのように、社長や経営陣の皆さんと直接話す機会は、仕事上ではあまりないですから、議論の中身より話したこと自体が役得感や思い出づくりになっています(笑)。また非常に負荷はありますが、現在取り組んでいる社員Tの組織化も大きな思い出になると思っています。ただし、職場の役員は非専従ですから、本来業務にプラスして活動してもらっています。まずはそのことを忘れずに、過度な負担にならないよう意識して、常に感謝の気持ちをもって接することが大切だと思っています。

―パート社員の組織化や労使の話し合いなど、さまざまな活動に取り組んでいくことで、今後に向けて大きな希望が見えてきますね。今後の組合活動を展望するにあたって考えられていることはありますか?

社員Tが組織化できたあかつきには、まずは雇用についてはこだわっていきたいと思っています。私個人の価値観かもしれませんが、仕事を辞める権利は働く人本人がもつべきだと思います。特に流通系は非正規社員が多く、その頑張りがあってこそ運営が成り立っています。その意味では、会社も非正規社員との雇用関係を真剣に考えるべきですし、労使で社員Tの皆さんの働きがいの向上や安定した雇用維持に取り組んでいければと思います。

当ユニオンでは、過去から「私たちの労働条件の源泉は企業の安定的発展」と言われており、こうした厳しい時代だからこそ、この言葉を組合員一人ひとりが改めて認識し、仕事に取り組んでいく必要があると思っています。組合の取り組みとしても、オフサイトミーティングのように会社や仕事について組合員同士が話し合う機会を多く設けるなど、組合活動を通じて会社や仕事を考えるきっかけを作っていきたいと考えています。これを愚直に繰り返し行い定着していくことが、「組合員の働きがい」や「労使の信頼関係」の向上に大きく寄与するとともに、本来組合の得意とする「職場の一体感」や「チームワークの向上」にもつながると考えています。まだまだ至らないところはたくさんありますが、組合だからという既成概念にとらわれることなく、「自分たちの会社は自分たちで良くする」ことを念頭にさまざまな活動を行っていきたいですね。

また、私たち執行部のメンバーは「鳥の目」と「虫の目」の両方をもつことが必要だと思っています。ともすると本部役員は、高い場所から広い範囲を見渡す鳥の目状態に陥ってしまい、細かいところにまで対応が行き届かなくなることがあります。組合は本来、横を向いていたり、後ろを向いている人に、声をかけながら一緒に前に進んでいくことが大切ですし、「鳥の目」としての全体感をもちつつ、会社のケアが届かない部分をきちんと補っていきたいと思っています。

労働組合の活動を通じて良い会社にしていくことが、結果としてその会社で働く組合員とって極めて重要であるということなのですね。これからの活動に期待しています。ありがとうございました。

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