ユニオン・ルネッサンス

2010年10月20日(水曜日)

「道徳」「思いやり」「正義」原点に立ち返る ―ノーリツ労働組合―

ガス・石油温水機器メーカーとして知られる株式会社ノーリツ。そこで働く従業員の有志が労働組合を立ち上げたのは、1973年のこと。組合員数がおよそ1,900名となった現在、全国にいる組合員の自主性を引き出しながら組合を牽引している清永委員長に、組合活動の原点となるビジョンについてお話を伺いました。

(聞き手:仕事と暮らしの研究所 代表 鹿野和彦)

ノーリツ労働組合 中央執行委員長 清永賢治さん\\\\\\\\\\\\\

ノーリツ労働組合

中央執行委員長 清永 賢治さん

全ての活動の指針となるミッション・ビジョン

 ―2009年に経営陣が新体制となり、従業員一人ひとりが主体性を持って行動していくことが求められているそうですね。それに対して、組合はどのような基本理念に基づいて活動しているのでしょうか?

ミッション・ビジョン\\\\\\\\\\\\\
 今から8年前に、当時の執行役員が100時間かけて策定した「ミッション・ビジョン」が組合活動の基本になっています。一本の木をイメージした全体像の頂点に「ノーリツ全従業員の豊かな暮らし」があり、それを支える「経済的安定」「働きがいの向上」「自己の発見」の3つの枝があるという構造です。

ビジョンにひもづいている「ノーリツ労働組合が目指すもの」の主語に「私たちは」と入れていないのは、組合員を「お客様化」させないため。以前行った組合員総合意識調査の結果で、自分たちのために役員が動いてくれることを待つ(お客様化している)組合員が多くいると分かったことがありました。組合活動の原動力は働く人全員にあるべきですから、主語を「私たち」という言葉ではなく、「ノーリツ全従業員」としたのです。また、「組合員」としていないのは、労働組合と会社が一緒になって、従業員満足度を高めていくという意識が根底にあるからです。

 ―ミッション・ビジョンの根っこの部分に「全従業員の参画・共感」という言葉がありますが、どのような形で実現させていらっしゃいますか?

これまで、色々な活動にチャレンジしてきましたが、労働組合として当然のことを行動に移しているだけです。正しいと思ってやっていれば、必ず共感してくれる人が出てくる。そう信じて、活動を進めているところです。

具体的には、現場の「困りごと」の解決に取り組んでいます。特に、筆頭株主が2007年に代わって以降、組合が会社経営に積極的に参画する機運が高まり、2009年にはES向上委員会を立ち上げました。今も現場の声を吸い上げながら活動を続けています。会社は、言葉では従業員・顧客を大切にしていると言いつつ、実際には株主に向いてしまいがち。それを、働いている人に向かせる土壌を作りたいと思っています。会社を良くするのは経営者でも、株主でもなく、従業員しかいませんから。

毎年、決算月に行われる方針発表会では、全管理職の前で社長が方針発表をするのですが、これまでは一方的に話をするだけで管理職にまったく浸透していませんでした。そこで、方針発表会の後に部門長が新経営陣を囲んでディスカッションを行い、トップの考えを浸透させる試みを始めました。「これ以上下がらない」というほど下がっていた従業員満足度調査結果が、最近ようやく上昇するなど、少しずつ結果が出てきたところです。

 ―従業員の満足を第一に考えることは、当たり前に思えますが、実はとても大変なことですよね。そうした活動を実践する上で、役員としての姿勢はどうあるべきだと考えますか?

第39期が最終年度となる第一次中期活動計画スローガン「わたしも組合、あなたも組合 ?一人ひとりが主人公?」にあるように、役員には「何かあったら何でも言ってください」という姿勢ではいてほしくありません。常に「何かあったら一緒に考えよう」という姿勢で、組合員の自主性を発揮させていくことが大事ではないでしょうか。あとは、前に述べた“共感”を組合員から得られるように「シンプルに、わかりやすく、ストレートに!アカンもんはアカン!」という私自身のスローガンを役員にも徹底しています。

日常の活動で気になるのは、部門長と支部役員が近くにいるにも関わらず、まったくコミュニケーションが取れていないということ。役員をやっていると色々な人との出会いがあります。そのネットワークを活用して、組合への参画や共感を促していくというのが私の考えです。中央執行部は経営陣と、支部の執行部は支店長や部門長と、職場委員は課長や所長やリーダーと、それぞれ対等の立場でコミュニケーションを密にしてほしいと思います。

―きちんとコミュニケーションが取れる土壌がないと、解決できる問題も解決しませんからね。役員としては組合活動を「見える化」することも大切になると思いますが、何かされていることはありますか?

力を入れているのは、広報です。分かりやすく伝えるということを重要視しながら、6年前にイントラネット上にホームページを作りました。「伝えたつもり」とか、「機関誌に載せたからいい」ではなくて、「確実に伝えること」を徹底しています。ブログ(委員長のつぶやき)も頻繁に更新し、ついに3年目になりました。新入組合員からも反応が返ってくるので、うれしいです。

―案外そういった基本的なことこそ、続けなければいけないものですよね。他に働きやすい職場づくりという観点で、取り組まれていることはありますか?

男性の育児休暇取得に関して、執行部が率先垂範できるように動いています。実は4年前にノーリツで初めて男性の育児休暇を取得したのは、今の副委員長なんです。

あとは女性の働きがい、生きがいを求める「ビタミンWスクエア」という女性だけの組織を結成しました。世間では、「現場の女性の活躍・活用」などと叫ばれて久しいですが、外からの働きかけより先に、彼女たち自身が何をしたいかを知りたいと思い、組織化を進めました。成果を出すというよりも、まず集まることを目的に始めたのですが、きちんとコミュニケーションをはかってもらえたようです。今はもう組合は関与していません。「子どもができたら退社しよう」と考えていた女性が育児休暇を取得したり、職場へ復帰するなど、目に見える成果も出てきました。

―人と人とのつながりをつくることが、本当の意味での「助け合い」になるのかもしれませんね。現場発の活動が軌道にのっていくと、嬉しいでしょうね。未来への夢やビジョンはありますか?

最終的には、組合がない会社が理想だと思っています。組合を否定するわけではないのですが、いい会社には仮に組合役員がいなくても、意見をきちんと伝えようとする人はいるはずです。全員が「会社を良くしよう」と思っていける会社が、理想ですね。

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